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大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学 (Department of Comprehensive Kidney Disease Research, Osaka University Graduate School of Medicine)

TEL. 06-6879-3747

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2 バイオ棟6階 E60-01

『 高リン血症を呈する保存期慢性腎臓病患者の血管障害に対する影響を検討する炭酸ランタンと炭酸カルシウムのランダム化比較試験 』

研究の目的

 慢性腎臓病(CKD)とは、腎臓の障害によって腎機能が低下したり、尿の中にタンパク質がでてくる病態を指します。CKDの患者さんの経過は様々ですが、中には進行性に腎機能が低下して透析や腎移植が必要になる方もいらっしゃいます。また腎臓以外にも、狭心症や心筋梗塞、脳卒中といった動脈の病気(心血管疾患)にもかかりやすいことも知られています。
 なぜ、CKDの患者さんは心血管疾患にかかりやすいのでしょうか? 1つの原因として、CKDでは血液中のリンの濃度が高くなりやすいことが考えられています(高リン血症)。リンは生体内で様々な働きをはたす重要なミネラルで、ほとんどの食事に含まれていますが、CKDの患者さんでは尿の中に排泄されるはずのリンが体の中に留まりやすくなっています。過剰なリンは直接的に血管の細胞にダメージを与えるだけではなく(血管内皮障害)、血液中でカルシウムと結びついて結晶として血管の壁に沈着し(血管石灰化)、間接的にも血管を傷害します。この高リン血症に対して、食事中のリンを吸着する薬(リン吸着薬)を使うと、長生きしやすくなるという研究もあります。日本では、炭酸カルシウム、炭酸ランタン、塩酸セベラマーがリン吸着薬として使用されていますが、塩酸セベラマーは透析患者さんのみが保険適応となっています。透析をしていないCKD(保存期CKD)の患者さんに対しては、従来は炭酸カルシウム(カルタン®)のみが保険適応でしたが、2013年8月より炭酸ランタン(ホスレノール®)も投与が認められることになりました。この炭酸ランタンは、リンを吸着する能力が高い一方で、非常に高価な薬剤であるという特徴もあります。
 最近では、リン吸着薬の中でもカルシウムを含んでいるものと含んでいないもので、血管の保護効果が異なるかもしれないと考えられるようになっています。炭酸カルシウムは投与量が多いと、吸収されたカルシウムが血液中でリンと結合すると血管石灰化を促進させてしまう可能性があります。このため、炭酸ランタンやセベラマーなどのカルシウムを含んでいないリン吸着薬が開発され、日本では透析患者さん対象として用いられてきました。実際に炭酸カルシウムより、セベラマーを用いてCKD患者さんのリンを管理した方が血管の石灰化が少なく、長生きするということを報告した研究もあります。しかし、セベラマーはリンを吸着する以外にも、高脂血症を改善したり炎症を鎮めたりする効果があるため、このような作用のない炭酸ランタンでも同じ結果が得られるかどうかは不明です。一方で、投与量を制限すれば炭酸カルシウムを投与する方が良いという考えもあります。保存期CKDでは血液中のカルシウム濃度が低くなる傾向にあり、これを防ぐために骨を溶かしてカルシウムを一定の濃度に保つような機構が働いています。この状態が持続すると、骨にも骨粗鬆症のような異常が出現し、徐々に悪化していくようになります。このため、保存期のCKD患者さんのリンの管理において、カルシウムを含んでいない炭酸ランタンの方が良いのか、カルシウムを補充できる炭酸カルシウムが良いのかは明らかではありません。
 以上から、保存期CKDにおける高リン血症の治療として、従来の炭酸カルシウムに比べて、新しく使用できるようになった炭酸ランタンが、実際の臨床で どの程度 血管を保護する効果があるのかという点を、骨に対する影響とともに、科学的に検証する必要があります。さらに近年では医療費の高騰が問題となっているため、このような高価な薬剤の有効性に関しては、医療経済学的な視点からも検討を加える必要があります。私達は、この研究から得られた知見をCKD管理の向上に役立て、将来の患者さんに より良い治療を提供したいと考えています。

研究の方法

 本研究は、冠動脈の石灰化と高リン血症を呈しているCKD患者さんを対象としています。

◆実施予定期間と目標症例数
 本研究の実施予定期間は、2017年3月末までとなっています。患者さん個人に関しては、参加登録から試験終了までは1年間となっています。また、計60人の患者さんに参加していただく予定です。

◆介入の割り付け
 この研究では、高リン血症の治療として ① 炭酸ランタンを用いて管理する場合と、② 炭酸カルシウムを用いて管理する場合を比較するために、それぞれのグループに患者さんを分けて治療を行います。どのグループになるかは、くじを引くような方法で決められ、それぞれの確率は2分の1です。どれに割り付けられるかを患者さんも担当医師も選択することができません。この方法を 無作為割付(ランダム化)といいます。

◆投与方法
 炭酸カルシウムは1,500 mg/日、炭酸ランタンは750 mg/日から開始し、『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン 2012』に従って、血清リン濃度が4.5 mg/dL未満となるよう投与量を調節します。最大投与量としては、炭酸カルシウムはガイドラインに従い3,000 mg/日、炭酸ランタンは1,500 mg/日となります(※血清リン濃度の低下作用に関する力価比は約1:2とする報告があります)。試験開始前から炭酸カルシウムを内服していた方は、炭酸ランタンに割り付けられた場合は炭酸カルシウムを中止して炭酸ランタンを750 mg/日から開始し、炭酸カルシウムに割り付けられた場合は目標リン濃度を達成できるよう投与量の調節を行います。

◆臨床試験スケジュール
 ●治療開始前に血液検査、尿検査、および冠動脈CTを行います。
 ●『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013』に従い、血清リン濃度が4.5 mg/dL未満となるように、割り付  けわれたリン吸着薬の投与量を調節します。
 ●食事療法に関しては、主治医の先生の指示に従ってください。
 ●開始時・6ヶ月後・試験終了時の血液検査を行う時に、通常より10 mL多めに採取いたします。


実施予定検査

※保険適応外の項目(25(OH)ビタミンD、インタクトFGF23、骨型ALP、TRACP-5、オステオプロテゲリン、αKlotho)および冠動脈CTは、研究費で測定します。

◆冠動脈CTに関して
 本研究に参加される全ての方に、内田クリニック(阪大病院北東隣)にて、『試験開始前』に冠動脈CT検査を受けていただきます。冠動脈CTは、通常の臨床でも狭心症が疑われる患者さんなどを対象として行うことがある検査で、石灰化のスコアが高いほど全身の動脈硬化が進展していて、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を発症しやすいと考えられています。費用は研究費から支払われ、患者さん自身の負担はありません。
 本研究では、『介入開始から1年後(もしくは透析導入時)』に2回目の撮影を行います。CT撮影時に造影剤は使用しませんが、画像の“ぶれ”を少なくするために、必要に応じて心拍を遅くする薬(セロケン®)を内服していただきます。セロケン®によって徐脈やめまいなどが生じる可能性があるため、患者さんの状態に応じて主治医が投与の必要性を判断し、投与量を決定します。CT検査1回の被曝量は約2~3 mSvで、人間ドックなどの胃透視の検査と同程度です(参考までに、自然放射線による平均年間被曝量は、1.4 mSv(日本)、2.4 mSv(世界)です)。

可能性のある副作用

 副作用の発現には個人差があり、必ず起こるというわけではありません。ただし、どんな薬でも副作用がおこる可能性はあるので、何か異常があれば お知らせ下さい。

【炭酸ランタン(ホスレノール®)※ 顆粒製剤】 
価格:1日あたり582~1,437円(保険の適応前)
◆起こりやすい副作用
 ●5%以上:悪心・嘔吐、便秘
 ●1%以上:胃不快感、食欲不振など
◆頻度はかなりまれですが、起こると重大な副作用
 ●頻度不明:腸管穿孔、腸閉塞、消化管潰瘍、消化管出血

【炭酸カルシウム(カルタン®)】
価格:1日あたり17~38円(保険の適応前)
◆起こりうる副作用
 ●高カルシウム血症(筋力低下, 便秘,悪心・嘔吐,多尿,多飲など)、掻痒感、尿路結石など

健康被害が生じた場合

 本研究は、既に保険で認可されている薬剤を用いて、用量・用法としても一般診療の範囲内で行われます。このため、医薬品の副作用によって入院が必要な程度の疾病や障害などの健康被害が生じた場合には、医薬品副作用被害救済制度に基づき医療費等の給付を請求することが可能です。この請求が認められない場合には、加入している臨床研究保険に保険金の支払いを申請します。いずれも適応とならない軽度の健康被害に対しては特別な補償はありませんが、医師が最善を尽くして適切な処置と治療を行います。この場合の費用は、通常の診療と同様に、健康保険による患者さんの自己負担となります。

研究計画及び研究成果の開示

 本研究の計画や その成果に関する情報は、大学病院医療情報ネットワーク研究センター(UMIN)のホームページに随時公開されます。さらに詳しい内容を知りたい場合は、他の患者さんの個人情報保護やこの研究の独創性の確保に支障がない範囲内で、ご説明致します。あなたが同意されれば、御家族等(親権者、配偶者、兄弟姉妹、成人の子、後見人など)を交えてお話しすることも可能です。

研究に関わる新規情報の提供について

 今回、同意を頂いた後に、学会等で新たに安全性や有効性に関する情報を入手した場合、この「臨床試験」を継続するかしないかの検討を十分に行います。その後すみやかに検討結果を含めて最新の情報をあなたに提供致します。新たに得られた情報によって参加継続を取り止めたい場合はお知らせ下さい。あなたはいつでも試験参加を取り止めることができます。

研究への参加にともなう費用について

 この研究では、高リン血症の治療薬に関して2つのグループに分けて治療を行いますが、炭酸ランタン(ホスレノール®)群は、薬剤費が高額となります。このため、診察時に処方する炭酸ランタン(ホスレノール®)に関して、患者さんが自己負担される費用を500円単位で四捨五入した金額に相当するギフトカード(JCB/VJA/UC)を診察後にお渡しします。炭酸ランタン(ホスレノール®)群でも自己負担が発生しない場合や、薬剤が非常に安価な炭酸カルシウム(カルタン®)群では、1ヶ月あたり500円分のギフトカード(JCB/VJA/UC)をお渡ししますギフトカードは、全国の百貨店、スーパーや家電量販店、書店などでご使用いただくことが可能です。研究期間中の検査や治療のうち、保険適応内のものは 通常診療と同じように扱われます。なお、保険適応外の天然型ビタミンDや一部の研究目的の特殊検査(血中25(OH)ビタミンD濃度やFGF23など)は、研究費より支払われます。また、謝礼や交通費などの支給はありません。

参加・不参加や 同意の撤回に 制約はありません

 この研究への参加は、あなたの自由な意思で決めてください。たとえお断りになっても今後の治療において不利益を受けることはありません。またこの研究への参加に同意した後にも、いつでも同意を撤回することができます。この場合も、診療にあたって不利益を受けることはなく、あなたに合った治療法を行っていきます。同意の撤回を希望される場合は、遠慮なく担当医師にお伝えください。あなたに関わる研究結果を破棄し、それ以降は 得られた情報を研究目的に用いないようにすることが可能です。ただし、すでに研究結果が公表されていた場合は、これを破棄することはできません。

個人情報の保護

 この研究で得られた結果は、学会や医学雑誌に公表されることがあります。その場合、患者さんの個人情報は、外部からは特定できないよう厳重に管理されます。また、この研究が適切に行われているかを確認するために、関係者がカルテなどを見ることがありますが、その場合もプライバシーは守られます。

知的財産権の帰属

 なお本研究の成果により、何らかの特許権等や それによる経済的利益が生み出される可能性がありますが、全ての権利は研究機関、民間企業を含む共同研究機関 および研究遂行者などに帰属します。

資金源及び関連組織との関わり

 この研究には、大阪大学大学院 医学系研究科 腎疾患統合医療寄附講座の研究費が使用されます。当講座は、中外製薬(株)および バクスター(株)から 研究資金の寄付を受けており、この研究は炭酸ランタン(ホスレノール®)の発売元であるバイエル薬品(株)との共同研究であり、バイエル薬品(株)から追加の資金提供を受けています。

資料及び試料の利用と保存

 この研究で得られたデータ、および血液や尿は、研究終了後も 大阪大学大学院医学系研究科 老年・腎臓内科で保管され、他の研究に利用する可能性があります。これらの2次利用については、別紙「包括同意説明文書」をよく読んだ上で、ご協力いただける場合は、包括同意書にご署名をお願いします。お断りになる場合は、研究終了後、当院の規定に従って廃棄します。

研究組織

◆主任研究者(試験全体を統括する研究者)
  椿原美治(大阪大学大学院 医学系研究科 腎疾患統合医療学)
◆登録センター(患者さんの登録を行う研究者)
  大阪大学大学院 医学系研究科 老年・腎臓内科 (責任者:米本佐代子)
◆データセンター(データ管理を行う研究者)
  大阪大学大学院 医学系研究科 老年・腎臓内科 (責任者:坂口悠介)

お問い合わせ先

 本研究に関し、疑問、苦情などある際には、下記研究事務局までご連絡ください。

【研究事務局】
大阪大学大学院 医学系研究科 腎疾患統合医療学
事務局責任者:濱野高行(寄附講座准教授)
住所:大阪府吹田市山田丘2-2
電話番号:06-6879-3857


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FAX 06-6879-3746

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